無題

2013年10月

全国各地で惜しまれながらも維持が困難になった歴史的建造物や伝統的
民家が解体撤去されています。故郷函館も150年前の開港時の多くの歴史
的景観や興味深い建築群が「市街地の空洞化」と共に危機に瀕しています。
この春、ものづくり・街づくりを考える市民団体が主催する「民家再生
コンペ」の審査員に呼ばれる機会がありました。
その建物は、函館山の麓、旧領事館や教会が点在する歴史的景観地域に、
海産物問屋を営む商家の個人住宅として昭和初期に建てられたものです。
函館港(巴港)を望む最高の立地にもかかわらず、港側は屋根と壁で閉
ざし、山側に函館山を借景にした見事な日本庭園、南京下見壁に瓦屋根、
内部は本格的純和風建築で、大切に住み維持管理されてきたものでした。
コンペのテーマは、建物を後世に残しながら、380坪余りの敷地とその
周辺を取り込む事業性に裏付けられた魅力ある再生とデザインです。
全国から建築家に限らず世代を超えた熱意ある数多くの提案があり、
一次審査を通過した作品は、市民公開の中でプレゼンテーションが行われ、
とても楽しく感動的なものでした。私にとって貴重な体験であったと共に、
審査員や受賞者との交流の中で問題意識をより高めることが出来ました。
文化財保存の十分な補助対象ではないこのような建物が、健全な形で
維持管理され使い続けられることがいかに困難か。嘗ての函館の豪商の住
まい旧相馬邸にしても持続的な運営は難しく、待ったなしの現実の中で、
継続的な啓蒙と仕組みづくりの模索が続いています。